木造住宅の『耐力壁』について
[STAFF BLOG] 更新日:2016/10/25
木造住宅の耐力壁について
耐震性でまず重要な部分は耐力壁の量とバランスの良い配置です。
建物は、上からの重さに対しては柱で支えることができますが、横からの力には非常に弱いです。
横からの力の代表が、地震時の横揺れ、台風時の横からの強風ということになります。
耐力壁はその横からの力に対して対抗する壁を言います。
1.耐力壁の種類
〇筋違いを使った耐力壁
木造軸組構法での代表的な耐力壁は、筋違いの入った壁です。
柱と柱の間に、斜めに入れた部材で、サイズが30×90、もしくは45×90等です。
片方のみに入れる場合やたすき掛けに入れる場合があります。
〇面材を使った耐力壁
それぞれの面材により、定められている壁倍率は異なります。
国土交通大臣の認定を受けたものとして、最近は様々な製品が
使われています。
・構造用合板
・構造用パーティクルボード
・構造用MDF(中比重インシュレーションボード)
・天然鉱物素材耐力板
・硬質せっこうボード
など、色々な材料・製品があります。
弊社は、構造用合板を使った面構造の『軸組パネル工法』です。
耐力壁はもちろんですが、床も特厚の構造用面構造による面構造です。
従来の木造軸組工法が外力を点で受け止めるのに対し、外力を面で受け止める為力が分散でき、
高い耐震性・耐風圧性を発揮します。
2.壁倍率
建築基準法には、耐力壁の強度を壁倍率として定められています。
(建築基準法 施行令第46条)
壁倍率は、
①木摺りを両面に設けた軸組を 1.0倍
②筋違い(30㎜×90㎜以上) 1.5倍
③筋違い(45㎜×90㎜以上) 2.0倍
④上記②~③のタスキ掛け 各倍率×2
⑤JAS構造用合板 2.5倍
など
筋違いと構造用合板を併用した場合は、壁倍率を合計する事が
できます。 ただし、壁倍率の上限は5.0倍とされています。
3.耐力壁の必要量
建物の規模に応じて、耐力壁が必要です。
横からかかる、地震時に発生する水平力(地震力)及び、
台風時に発生する水平力(風圧力)に建物が耐えられる
ように、建物の床面積及び、外壁の見付面積の大きさに応じて耐力壁
の量が決まります。
地震力と風圧力のそれぞれに必要な耐力壁の多い方(安全側)
の壁量が必要になります。
a)地震力に必要な壁量
各階床面積 × 壁係数(地震)
壁係数は建築基準法では、右図の様に定められています。
地震力による壁係数(cm/㎡)は、建物の階数・建物の重さによって
定められています。
各階の床面積に壁係数を乗じて得た長さだけ、建物の
X方向・Y方向のそれぞれの方向に壁が必要です。
軽い屋根というのは、コロニアルのようなスレート葺きや、
鉄板葺き 重たい屋根は、瓦(陶器瓦、いぶし瓦) などを指します。
参考
コロニアルの重量 :68 ㎏(3.3㎡あたりの重量)
陶器瓦の重量 :144㎏( 〃 )
前のブログ『木造住宅の耐震性』の中でもお話ししているように、
重さに応じて地震の揺れの力が異なります。
重量のある建物ほど大きな地震力を受け、軽い建物ほど地震力は小さくなります。
各階外壁見付面積 × 壁係数(風圧)
風圧力による壁係数(cm/㎡)は、風の強い地域と一般地域の2種類が
あります。
各階のX方向・Y方向のそれぞれの外壁見付面積に壁係数を乗じて得た
長さだけ、各方向ごとに壁が必要です。
4.耐力壁の配置
耐力壁は必要な量をX方向・Y方向ともバランス良く配置することが大事
です。
重心といって、建物の重さのバランスがとれる位置と、
剛心といって、建物に外力がかかると、建物は回転しようとする力が
かかり、その回転の軸となる位置を剛心といいます。
重心の位置と剛心の位置が近いほどバランスのとれた耐力壁の配置と
なります。
この偏りを偏心率といって、耐震診断では、偏心率が0.15以下だとバラ
ンスが良く偏りが無い建物とされています。
剛心が支点、重心が重なりとなり、距離が長いほど揺れる力は大きく
なります。
従って、耐力壁はバランス良く配置することが大事になります。
弊社標準仕様である『長期優良住宅』では、これら耐力壁の量やバランスの良い配置などが、基準法レベルの
耐震性より厳しくなっており、いわゆる耐震等級は2以上とされています。